あなたは、海外で日本語を学ぶバイリンガルの子育てで「失敗したくない!」と思うことはありませんか?
バイリンガル子育ての難しさの一つは「これをやれば絶対うまくいく!」という明確な指針がないことかもしれません。
その上、ただなんとなくやればいいと思っていると、やがて子供が日本語を話さなくなることがきっかけで、親も日本語教育をあきらめるパターンも多くなりますよね。
親としては「子供にそこまでムリをさせたくない」という気持ちも大きいからではないでしょうか。
そのお気持ち、本当によくわかります。
でも私は、大きくなった子供たちから「どうしてもっとやらせてくれなかったの?」「(自分が)泣いてでもやらせて欲しかった」
という声を意外に多く聞くので、「せっかくだから、簡単にはあきらめないで!」とお伝えしておきたいです。
大きくなってから、子供自身が「日本語、いらない」と捨てる選択ができるように、その選択ができるまでは、日本語に触れる機会を積極的に作ってあげるのが、オトナの仕事かなと思っています。
今回は、そんな形で親子ともに日本語教育をあきらめてしまうことのないように「失敗例あるある」についてお話しします。
でも、もし失敗例をやっていたとしても、ここで気づけば、大丈夫! あわてずに方向転換してみてください。
今からでも間に合いますし、これまでの経験が、お子様の中できっとどこかで役に立つことがありますよ。
(「教育にムダなことなんて、一つもない!」と私は思っています)
もし「どうすればいいのかわからない!」と悩んだ場合は、この記事の一番最後をご覧ください。
(筆者のプロフィールについては、こちらをご覧ください)
2つの失敗例とは?
あなたのお子さんは、
「小さい頃は日本語で話していたのに、気づいたら子供が日本語を使わなくなった」、
または
「日本語を使うことを嫌がるようになった」ということはありませんか?
子供が日本語をだんだん使わなくなる原因として、考えられる特徴が2つあります。
1. 子供が日本語を話さなくなった状況を放置する
2. 読み書きの学習を優先する
順番にお話しします。
1. 子供が日本語を話さなくなった状況を放置する
「気づいたら子供が日本語を話さなくなった」というケースはよく聞きます。でも、子供が日本語を話さなくなるのは「ある日突然」ではありません。
保護者の方に思い返していただきたいのですが、だいたい子供がいつ頃から日本語を話さないようになったでしょうか?
5歳頃の言語習得力の伸びは、とても大きいと言われています。
1日に5〜7語も習得すると言われ、だいたい5,000-10,000語も、彼らの頭の中に入っているそうです。
この時期は、日本語の習得率も高いですが、バイリンガルの子供たちは、同時に現地校での言葉の習得率も高くなります。
学校で学ぶたくさんのことを現地語で覚え、考えるので、現地語での学習をきちんとすればするほど、この時期にバイリンガルの子供の日本語が負けてしまうことも、多くあるのです。
ただし、子供の学習力に限界があるわけではありません。
片方の言語を学習すると、もう片方の言語の力が落ちる、ということはありませんので、この時期限定の「言語学習の力」を最大限生かして、現地の言葉同様、日本語も伸ばすことがポイントになりますね。
子供はつい自分が使いやすい言葉、つまり一日の中でより多く、より長く使う言葉を使って話したがります。
ここでこの状態を放っておくと、親と子がそれぞれ違う言語で会話をするか、日本語を使わなくなるようになってしまいます。
一度、習慣が変わってしまうと、元に戻すのには大変な時間と労力がかかりますので、そこであきらめてしまうのではなく「日本語ではこういうんだよ」と少し時間をかけて、お子様の話すことに向き合ってください。
子供の話をじっくり聴くことは、日本語の問題だけでなく、子供の自尊心向上にもつながりますよ。
また「動画を見せておけばどうにかなる」と考える方もいらっしゃいますが、「話す」行動はアウトプットなので、「動画を見る」というインプットだけでは改善されにくくなります。
お子様がお友達と日本語で話す機会を増やしたり、親子で日本語を話す場に出かけて行ったりして、生きた日本語に触れる機会を、なるべく週1回ほど定期的に作ることがおすすめです。
言語習得率が高く、現地校の学びが本格化する5〜6歳頃は、子育ての中でも、子供の日本語の一生を決める非常に大切なポイントです。
面倒だと感じても、決して諦めないでください。
もし、すでにこの機会を逃してしまい、お子様が日本語を話さなくなってしまった場合でも「ぜひ取り戻したい!」と感じている方は、この記事の最後をご覧ください。
2. 読み書きの学習を優先する
日本語子育てというと「ひらがなを覚える」とか「カタカナが読めるようになる」「漢字が書けるようになる」ということを気にされる方も多いと思います。
確かに、読み書きの力は大切なものです。
でも、読み書きができれば、日本語が使えるようになるか、といえば、疑問が残るところですね。
自然な言語習得の順番は、
といわれています。
聞けないことは話せません。
また、読めなくても、書けなくても、話せますが、読めても書けても、話せるとは限りません。
つまり、読み書きが「話す力」の代わりにはなれないのです。
例えば、「てんとうむし」という言葉があった場合、ひらがなが読めれば「て」「ん」「と」「う」「む」「し」という文字の羅列として声に出して読んだり、真似して書いたりすることはできるかもしれませんが、その文字の羅列が一体何の物体を表すのか、わからないことがよくあります。
子供が、自分が読んだり書いているものの意味を理解できなければ、それ自体、あまり意味のない行為になりますよね。
(私も、受験英語を学んだ時、ひたすら書く練習をたくさんして英作文ができるようになりましたが、英会話が得意かと言われれば、残念ながらそうとはいえません…)
聞く・話す・読む・書くいずれの力も、継続が大切です。
聞いたり、話せるようになった言葉の定着として、書くというアウトプットは非常に効果的です。
書けるようになった言葉は忘れにくいと言われますね。
しかし、書く習慣が頻繁にないと、すぐに文字は書けなくなるので、海外に住むバイリンガルの子供にとって一番難しいのは、必要性が一番低い、この書く力を維持することだといわれます。
先日、かつて日本人学校や補習校で教鞭を執った先生と、国語の「書く」の定番、漢字テストについてお話ししました。
補習校に通っていた国際児の娘は、毎週20題の漢字テストでかなり苦労しましたが、いずれ日本に帰る予定があるお子様でも、日常的に漢字を使う頻度がないため、子供自身が「今は使わないのに、なんでやらなきゃいけないの?」と、習得に非常に苦労する、ということでした。
子供が成長するにつれて、子供の学習のモチベーションにも大きく関わりますので、なぜ必要か、どの程度やらせたいか、などを考えながら、続けていくといいですね。
「読み書きの力」と「話す聞く力」は別物であると捉えること、
また、日本語子育てにおいて、親子の「話す」コミュニケーションが、最も大切だということを参考にしながら、読み書きの活動を取り入れてください。
まとめ
それでは、ここまでの内容をまとめてみましょう。
親子で、バイリンガルの子供の日本語教育をあきらめなくてもいいように気をつけるポイントは、2つ。
1. 子供が日本語を話さなくなった状況を放置しない
言語習得率が高く、現地校の学びが本格化する5〜6歳頃は、子育ての中でも、子供の日本語の一生を決める非常に大切なポイント
2. 読み書きの学習を優先しない
「読み書きの力」と「話す聞く力」は別物、読み書きは「話す力」には代わりにはなれない
聞いたり、話せるようになった言葉の定着として、書くというアウトプットは非常に効果的
日本語子育てにおいて、親子の「話す」コミュニケーションが最も大切
いかがでしたか?
親が子供の教育をする時、つい自分が受けていた教育がベースになってしまいますが、子供に応じて、状況に応じて、ベターな方法を探し続けてみてください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
もし、今回挙げた2つの例を直す機会を逃してしまったという方も、大丈夫!
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少しでも、みなさまのお役に立てたら幸いです。