あなたは、日本語を含めたバイリンガルの自分のお子さんに、動画を見せることがよくありますか?
海外に住んでいると、街中で、なかなか日本語を目や耳にする機会がありません。
「動画は、無料のものも多いし、耳から日本語を聞く練習にもなる!」
たしかに、そうですね。
「日本語なら、動画を見せるのもアリでしょうか?」
特に、幼児のバイリンガル児を持つお母さまから、よくいただくご質問です。
「もちろん、アリです!」と、私はお答えしています。
でも
「動画を子供に見せることは、本当にいいの?」
「動画を見せていれば、日本語ができるようになるの?」
と思ったことはありませんか?
実は、そこで問題になるのは、「動画かどうか」ではなく、「動画の見せ方」なのです。
ここでは
「あなたは意識している? 子供への動画の見せ方」
について、お伝えします。
幼児期からこの方法を意識すれば、
バイリンガルの日本語力を育てるためだけでなく、現地の言葉の力も上がるので、
オススメです!
(筆者のプロフィールについては、こちらをご覧ください)
1. たった2つのことで、子供の動画鑑賞が貴重な体験になる!
子供に動画を見せるときに意識するべきことは、この2つです。
1. 動画をアウトプットのツールとして活用すること
2. 動画を親子のコミュニケーションツールとして使うこと
では、なぜこれらが重要であるかを説明します。
あなたのお子さんは、どんな時に動画を見ますか?
ママやパパが忙しい時、
特に幼児期の子供が一人で見てくれるので、
ついつい「お守り」の代わりに使ってしまうことが、よくありませんか?
耳から日本語を聞いていたとしても、
ただ見せただけでは、ほとんど言語習得の効果はありません。
言語習得において大切なのは、インプットの量、
でも、それよりもっと大切なのは、アウトプットの量なのです。
動画は、ついつい受動的なものになってしまいますが、
この動画をアウトプットの機会として活用します。
例えば、見たもの、聞いたものについて、実際口に出して、他の人と共有することです。
そして、もう一つ大切なポイントは、
「あなたは、動画を親子のコミュニケーションツールとして使っていますか?」
ということ。
つまり、
「動画を親子で一緒に楽しむ」
‖
「親子で時間を共有する」
ことです。
子供の言語発達と親子の信頼関係は、大きくつながっています。
両者とも好きなことをして過ごす一緒の時間が増えれば増えるほど、
親子の結びつきも強くなります。
大人でも、普段接する機会が少ない人や、信頼関係ができあがっていない人とは、
あまり深いコミュニケーションには発展しませんよね。
ぜひ、この2つのポイントを生かして、お子さんの動画鑑賞を貴重な体験にしましょう!
具体的には、
子供だけで暇つぶしに動画を見せっぱなしにするのではなく、
保護者の方も一緒に見て、
終わってから「おもしろかったねー!」とか
「〇〇のシーンの▲▲は、□□だったね!」など、
共通の話題として、お互いに思ったことを話して共有してみてください。
小さな子供の場合、
最初から、自分の思ったことを話すことは難しいかもしれませんので、
「おもしろかった?」とか「好きだった?」とか
まずは簡単な感想から聞いてみてください。
小中学生くらいでも、この感想の共有時間が、自分の意見を持つきっかけになります。
大人が感じることと全く違うことも多いので、ぜひ興味を持って聞いてみるとおもしろいですよ。
もちろん、ただ楽しむために見る時間も必要ですから、
動画を見るたびに、しつこく質問しなくても大丈夫。
この活動を少しずつでも続けていくと、
ただ、ぼーっと受動的な時間が過ぎていくのではなく、
自然と、いろいろなことに注意して、考えながら動画を見るようになります。
そして、子供が大きくなるにつれ、講演やセミナーなどの他者の話も、
考えながら聞く習慣がつきますよ。
2.「動画のよさ」ってなに?
お子さんにとって、絵本より動画の方が、
動くのでおもしろいし、集中してくれるので、
保護者の方にとっても活用したいアイテムではないでしょうか。
「絵本はいいけれど、動画はよくない」と言われることも多いですが、
それよりも、
子どもに与える影響が「いい絵本、いい動画」を見つけていくことが大切
だと考えています。
いい影響を与えてくれる動画には、絵本だけでは補えない、多くの利点が含まれます。
・画像が動くのでわかりやすい
・得られる情報が多い
・印象に残りやすい
・他の人が話す日本語を聞くことができる
などがあります。
視覚と聴覚を同時に刺激してくれる動画は子供が小さければ小さいほど、
絵本の何倍も影響力が大きいので、ぜひ吟味したいですよね。
「どんな動画を見せたらいいのかわからない!」
「いい動画を探すときのポイントは?」
次に、この点についてお話しします。
3. 動画を選ぶときの基準は?
選び方のポイントとして、3つご紹介します。
見せる動画は、
子供に与える影響や『教育的であるかどうか』だけでなく、
「動画で使われている日本語を、自分の子供に使ってほしいかどうか」
という視点で考えると、わかりやすいですね。
海外で日本語を聞く機会が少ない子供にとっては、
「きれいな日本語」「他者に使うのにふさわしくない日本語」
の区別をすることは、なかなかできません。
特に保護者の方が、日頃から「日本語で話してね」とおっしゃっていれば、
子供たちは「日本語であればなんでもいい」と考えていることもあります。
動画は、耳から直接入ってくるもので、影響も大きいため、
保護者の方が動画を選んで見せていくことが重要です。
そして、意外と忘れがちですが
「親がその動画を見ていて、不快にならないかどうか」
も重要な決め手になります。
例えば、日本では誰でも知っている
「正義の味方が悪者をやっつける!」
という定番のアニメであっても、
外国籍の親に
「たとえ相手が悪でも、暴力を振るうシーンを子供に見せるのはよくない」
と言われたことがある方も多いようです。
確かに、ヨーロッパで
「困っている人をみんなで助けて、問題解決をする」
というアニメには、誰かが誰かを叩くことはありません。
子供が喜んでいても「親が見せたくないものは、見せなくてよい」と思います。
「親が見せたくない」のは、何か理由があるからでしょう。
その理由を明確にしてみることも、大切ですね。
また、
動画を見せる目的がある場合は、その目的に合っているか
も確認しましょう。
例えば、我が家では、
疲れたり、ちょっとイヤなことがあって気分を切り替えたいときは、
楽しくなりそうな5分程度の動画、
コロナ禍のロックダウン中、寝る前に気持ちを落ち着かせるために、
10分程度の動画を使っていました。
4. オススメ動画は?
コロナの影響もあり、NHKの番組が【NHK for School】として、
海外でもネット上で視聴することができます。
(2022年3月現在)
教育的にもテッパンですが、もし迷った場合は、
ここから始めるのもテですね!
(↓紹介動画は、音声が出ますのでお気をつけください)
我が家の子どもたちの様子も参考に、
以前、お教室の保護者会でオススメさせていただいたものを、
6つご紹介します。
=======================
1.「ことばドリル」
コントで国語(小1-2)の要点を紹介しているので、大人でも楽しめます。
特に毎回最後に出てくる、漢字の歌がよくできていて素晴らしい!
それほど難しくないので、3歳児にも見せています。
2.「おはなしのくに」
日本の昔話をいろいろな役者が一人芝居で紹介しています。
お話が理解しやすいので、幼児でも楽しめます。
(渡辺直美さんの「金太郎」は必見!?)
3. 製作が好きな子供には「キミなら何つくる?」
対象が小学5-6年になっていますが、内容は難しくないので、
低学年でも楽しんで見ています。
4. メカが好きな子供には「テキシコー」
「ピタゴラスイッチ」の少し難しい版、とでもいえるでしょうか。
プログラミングの導入にも役立ちます。
5. 道徳番組「新・ざわざわ森のがんこちゃん」
日本の習慣や文化が少しずつ出てくるので、
普段、日本文化に触れる機会が少ない海外の子供たちには、特に新鮮かもしれません。
親子で、居住国の様子と比較するのも、おもしろいですね。
6. 定番の「にほんごであそぼ」
狂言、歌舞伎、方言なども楽しめます。
=======================
他にも、魅力的な番組がたくさんありますので、
ぜひお子さんの反応を見ながら、お気に入りの番組を探してみてください。
5. 応用編
ネット上以外にも、DVDを活用されている方もたくさんいらっしゃると思います。
小3の娘は、映画館で海外初上映だった【名探偵コナン】の映画を原語(日本語)で見ることができて、それをきっかけに、すっかりハマりました。
大手ネットショッピングサイトでは、過去のドイツ語版コナン映画で、日本語が収録されているDVDがあるので、それを買ってほしいと言われ、親子で一緒に見ました。
DVDは、意外と日本よりお安く手に入ることもあります。
テレビアニメ版の場合、現地語の吹き替えしか入っていないこともありますので、ご注意ください。
コナンくらいになると、日本語のレベルとしては少し難しいので、DVDを止めたり、巻き戻したりしながら、繰り返し見られるのは利点ですね!
また、吹き替えDVDで、一つの映画を何ヶ国語でも見られるのは、海外ならではのお得ポイントですので、言語を変えて何回も見せるのもいいアイデアだと思います。
まとめ
それでは、これまでご紹介したことを、4つにまとめてみましょう。
- 受動的な動画鑑賞を
アウトプットの機会として活用
- 「動画を親子で一緒に楽しむ」ことで、
動画を親子のコミュニケーションツールとして使う
- この両方をより発達させるため、
保護者の方も一緒に見て、
お互いに思ったことを話して共有してみる
- 動画を選ぶときの基準は
「動画で使われている日本語を、
自分の子供に使ってほしいかどうか」
手軽に使えるからこそ、
動画に「頼る」のではなく、動画を「生かす」立場になりたいですね。
=====================
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「3歳からのバイリンガル子育て相談窓口」をオンラインで行っております。
相談料は一切かかりませんので、
お一人で悩まずに、こちらのフォームより、お気軽にお問い合わせください。
少しでも、みなさまのお役に立てましたら幸いです。